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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)1082号 判決 1950年11月21日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人太田耐造同玉沢光三郎上告趣意第一点について。

憲法第三八条は、裁判所が被告人を訊問するに当り予め被告人にいわゆる默秘の権利あることを告知理解させなければならない手続上の義務を規定したものではなく、従ってかような手続をとらないで訊問したからとて、その手続は違憲とは言い得ず、刑訴応急措置法第一〇条に違反するものでないことについては、当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第一〇一号昭和二三年七月一四日大法廷判決)。そして、この理は捜査官の聴取書作成についても異なるところのないことは右判例の趣旨から窺われる。されば、原審並びに検察事務官がその取調に際し被告人に默秘権のあることを告知しなかったからとて所論のような違法はなく、またこれらの取調に基く被告人の供述が任意性を欠くものと速断することもできない。

それゆえ、論旨は理由がない。

第二点について。

本件太綾紺染八四反、同広巾夜具生地約八七ヤールが繊維製品中の衣料品に当ることは、原判決挙示の証拠たる原審公判廷における被告人の自白に徴してもこれを認め得られるし、また原判決が「衣料品である新品の」云々と判示していることからも知ることができる。それゆえ、原判決には所論のような理由不備の違法はない。

よって、旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保)

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